カナメの日常

「人生は日常と非日常のバランスが大切」が持論のカナメがなんとなく考えていることの記録。

祖母と私3「爪切り」

先日、祖母とのお風呂について書いた。

 

お風呂と概ねセットになっていた作業がある。

 

爪切りである。

 

お風呂で少し柔らかくなった爪を切るのも私の役目だった。

 

祖母の爪はうらやましいくらい、分厚くて丈夫だった。

それは手も、足も同様に。

(私は母に似て、薄い爪で、すぐに二枚爪になるし、勝手に裂けて深爪になるし、今も難儀している)

 

加齢のせいだろうが、縦すじは入っていたが、分厚いためそのままにしておくと伸びるばかりなので、爪切りで切らなければならない。

 

しかし、ただ短くすればいいというものでもない。

 

というのも、祖母はリウマチの薬を飲んでいたので、よくあるプラスチックの型押し容器にアルミフィルムで蓋がされた薬包から薬を何粒も取り出す必要があるのだが、手の関節が変形していて細かな作業ができないため、薬の入っているプラスチック面を押し上げて錠剤を出す、という一般的な動作が難しい。

 

そのため、薬を取り出す際は手の爪でアルミフィルムを破って錠剤をむき出しにしてから、手のひらへ落とす、というやり方で薬を取り出していたのだ。

 

つまり、手の指の爪、特に右手の親指の爪はある程度残しておかなければならず、かつ、すこしだけ中央を尖らしておく必要があった。

(フィルムを破りやすいように)

 

幸いなことに、私はそこまで不器用ではなかったので、祖母のこの要望には容易に応えることができた。

(実は、母は大変不器用で、人の手足の爪なんて絶対に切れない、と主張し、それは祖母と私も認めるところではあった)

 

あまり長く残しても、またすぐに切らなければならないので、短くはしつつも、中央を尖らし、ただ、あまり鋭いと危ないので、ほんの少しだけ先端をカットするのがコツだ。

 

足も同様で、あまり短くして巻き爪になっても大変なので、しっかりとスクエアカットに整える。

 

時には、マニキュアを施すこともあった。

 

夏場は特に、祖母はサンダルをミュールを好んだし、私が当時使っていた、アナスイのラメ入りのネイルポリッシュを塗ってあげると喜んでいた。

 

祖母は結構酷い外反母趾だったと思うのだけど、すっかり変形してしまって、かえって痛くないのだと言い、締め付けのない華奢なサンダルやミュール(もちろんヒールはあまり高くないもの)を履いていたのをよく覚えている。

 

元気な頃は、一緒に買い物にも行っていたので、たまにお揃いの靴や服を買うこともあった。

 

私が試着していると、自分も欲しくなるようで、同じものや、色違い、そうでなくても、同じブランドから自分の好きな形のものを選んで購入していた。

 

よく一緒に買い物をしていた頃の私は20代で、祖母は70代だったと思うが、祖母が「私もこれが欲しい」と一緒に靴や服を試着していると(しかも意外と似合うのだ)店員さんに、素敵なおばあ様ですね、と言われるのがちょっと誇らしかった。

 

その流れで、お会計も一緒にしてくれるのは本当に有難かったが…今の私なら、たとえ買ってくれると言っても、母と一緒に洋服の買い物に行こうとは思わないので、やはり、おしゃれで可愛らしい祖母と一緒の買い物が楽しかったのだな、と思う。